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なめしんとは

落葉きのこについての疑問

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落葉きのこが好きな環境って?

北海道の落葉きのこももうすぐ終盤となり、今年のお祭り騒ぎも終焉を迎えようとしてます。

私もお祭り騒ぎに参加して美味しくいただきました。(10/14に採ったやつです)

初見の場所に行きましたが、同じ木のところに行くのですが取れた場所取れなかった場所があるのはなんでだろう?と思い色々調べてみました。

初見の場所に行きましたが、同じ木のところに行くのですが取れた場所取れなかった場所があるのはなんでだろう?

達人は空気で感じるのだ。山を見れば分かる。

・・・・・・・・。(無言)

きのこは菌だからきっと育ちやすい環境があるはず。
温度?湿度?植生?気になってきました。

15℃ このときはハナイグチを収穫できた

というわけで、医学を志している私は技術を科学にするのを生業としておりますので、調べてみようと思いました。現場の仮説というか気がついていることを調べてみようと思います。
(プロの方でそれは違うよ。があればぜひお教えいただけるととても嬉しいです。)

温度計の後ろに見えるハナイグチたちボコボコ生えまくっているところはこのくらいの温度が多いそして湿度もノーマル

名人の奥深さは十分承知の上です。「山の雰囲気を見ただけで分かる人が居るんです。データ通りになればいいんですけどね。」なんてよくおっしゃる方が居ます。膨大な経験値より記憶として脳がデータを集積して、気温や風、日照条件、木々の植生や時期とのマッチングなど、判断されております。


医学でも人の歩き方一つ見れば、どこが悪くてここが原因だと、名医や名治療家の治療方針選択が神業のような方を目にします。

どうすれば、達人一人が治せる人数を多くの人を治すため研究ことが医学という学問です。

落葉きのこにおいてもたくさんの消費者に届けるため産業化していく必要があり、おそらく多くのデータが集積されているので、今わかっていることを理解することは大切で、それは当たり前だと小馬鹿にすることなくちゃんと読み解くのが学問であり科学です。
調べたうえで、ある点に対する考慮がされていないと思うのであれば仮説をたて、それに対するデータ収集、解析して論理的に話さなきゃ話になりません。


なんとなくの仮説

  • 至適な温度がある
  • 至適な環境がある
  • 日照条件はなぜか南東の朝日が当たるところに多い
  • 至適植生がある(上2つとも重なります。シダ植物ばかりの谷のような場所はあんまり生えない、枯れ笹に地面が覆われている所もあんまり生えない(生えているは少し土が見えているようなところ))
  • 降雨量はどうなのか??(雨降りのあと2日後が良い)

論文を読んでみた

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ハナイグチ 温度

方法:Google scholarにて「ハナイグチ 温度」で検索、論文数が少ないため発行年数は規定していません。
結果:28文献 うちPDFが参照できた21文献を参照、内ハナイグチついて論じられている3文献を調査

Murataら,1993 は、シロヌメリイグチとハナイグチの培養性質を研究しており、栄養環境、温度、酸性度について比較研究をしている。ハナイグチの温度に関しては20度〜25度が菌の活動が活発であった。また栄養環境においてはグルコース、マンノース、トレハロースが多く利用されており、フルクトースやセロビオースを栄養素として利用していた。またpHに関してはpH5~6であり、6以上になると急速に成長が悪化した。一方シロヌメリイグチに関しては一定の傾向が見られなかったと報告している。

Akamaら,2008は、外生菌根菌分離菌の成長様式を培養温度および各種培地について比較した。まず、成長に適した培養温度を明らかにするために、外生菌根菌 62菌株を、 5℃から 40℃までの温度で培養した。興味深いのは、アミハナイグチ属として2種アミハナイグチとカラマツベニハナイグチ、ヌメリハナイグチ属として、ハナイグチ、ベニハナイグチ、シロヌメリイグチ、アミタケ、チチアワタケ、ヌメリイグチ、ゴヨウイグチの発生を比較した。それによるとハナイグチは20〜25℃が最適温度であったと報告している。

あくまでここまでのお話は、地中の中での菌糸成長に関するお話であり、子実体(地中に出てくるきのこの部分)の発生の話ではない。ただし、収穫量は夏の菌糸成長が良い状態だからこそ小実体が多く発生する。

夏の至適温度やpHがいい環境でよく育ち、そこから何度になると子実態が発生するのかを調べる必要がある。

STEP
子実体発生の環境について

Ohga,2019は、キノコの成長に対する環境要因は物理的なものと,栄養的なものに大別される。物理的なものは,温度,湿度,培地の水分状態,培地 pH,光,ガス環境であり,栄養的なものは,炭素源,窒素源,無機塩類,ビタミンがあげられる。と述べている

感覚的にも、間違いないと思いますが、僕らじゃ考えようがないのがガス環境や栄養源の炭素源や窒素源についての考察は本当に素晴らしく目からウロコでした。


子実態に最適な温度環境

・Ohga,2019によるときのこの子実態発生について、25℃で菌糸成長が最適な菌には15〜20℃まで温度を下げることで子実態が発生すると述べている。

・katagiriら,2021によると、ハナイグチの子実体形成が始まるとされる,地温が17.5℃を下回る時期(発生刺激日)より前の約1か月間は,降水量が少ないほうがハナイグチの発生には良いことが分かった。また,発生刺激日以降子実体発生が終了するまでの約2か月間の地温は高温傾向で推移するほうが発生に良い影響を与えることが分かった。と報告している

・Ohsawaら1987.は筑波大学演習林の落葉松林と発生場所と降雨量を記録する中で、1985年が大量に発生しており、1985年と各年数と降雨量を比較すると6月の降水量が年間降水量の2倍であった。また、9月27日が発生のピークであったが8月、9月の降雨量は他の年と比較して優位に少なかったと報告している。

・Yamadaら,2015.は、ハナイグチの発生を観察するため、下草刈りを行い、腐食層を除去した群と腐食層を除去しない群に分け、粉砕した子実体を撒き、観察を行っている。それによると子実体形成を誘導する環境因子として地温の低下が示唆され,土壌10cm深で17.5℃付近と推定された.と報告している。また、2013年の研究において腐食層を除去しないほうが子実態の発生が良かったと報告している(2013)。

・Masunoらは、,平試験地のハナイグチ発生と 地温の関係をみると,子実体発生は温度依存的で地温(10 cm深)が 17.5℃程度まで低下すると子実体形成を開始し, 10 日後くらいから地表に発生している。また, 地温(10cm深)が 12.5℃程度まで低下して 2週間後くらいで発生が終了した。したがって,ハナイグチの子実体発生を誘導する地温(低温刺激)は,17.5℃付近と推定された。

温度に関してまとめると、ハナイグチが発生するのは土壌10cmの温度が17.5℃から発生し始め

12.5℃を下回り2週間ほどで発生が終了する

STEP
ハナイグチの増やし方

ハナイグチってどうやって増やすのがいいんだろう??って思いますよね。
・虫食いきのこはそのまま??
・ぬるま湯にいれて撹拌して巻く?
・蹴っ飛ばしてバラバラにする??
・根本は残すとまた生える??

論文を読んでいて以外だったのが、

粉砕して撒く方法が最も多かったのでそれが良いようです。
その他には、細かく砕いたものを水に撹拌して巻いている研究もあり、実際量は増えています。
特許としてハナイグチのカラマツ林地栽培方法について見つけることができました。

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ハナイグチはどんな場所を好む?

此処から先は徐々に追記していく形にしましょう。10/25

まとめ

ハナイグチに関して、土壌温度が発生温度は17.5℃を下回ると小実体が出現する

ハナイグチの菌糸成長には20℃〜25℃の土壌温度が必要である(そのため、7月8月は雨が少ない方が良い)

ハナイグチの発生終了は土壌温度が12.5℃を下回り2週間ほどで終焉する

その方法にはいくつかあり単純に細かくしてばらまく、細かくしたものを水に撹拌してばらまく方法があり、それを行うと収穫量が増加した。

参考文献

1)竹内嘉江ら:マツタケ・イグチ等有用菌根菌の現地適応化調査試験,長野県林業総合センター研究報告.2011

2)赤間慶子ら:様々な培地上における外生菌根菌の成長様式,森林総合研究所.2008

3)松本哲夫ら:菌根性きのこに関する研究,研究報告 / 群馬県林業試験場.1999

4)村田義一ら:ハナイグチとシロヌメリイグチの培養性質,北海道林業試験場研究報告.1993

5)増野 和彦ら:地域バイオマス利用によるきのこの増殖と森林空間の活性化技術の開発,30号,p.47-86(2016-02)

6)大沢正嗣ら:ハナイグチ小実体の発生動態,筑大演報第3号.1987

7)片桐一弘ら:ハナイグチ増殖現地適応化試験-気象条件がハナイグチ子実体発生に与える影響-,長野県林総セ研報第35号.2021

8)山田明義ら:ハナイグチ増産を目指したカラマツ林の施業,第123回日本森林学会大会.2011

9)大賀祥治ら:キノコ伝道師の流儀 : 44年間の研究回想とこれからへの提案,九州大学農学部演習林報.2019

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